戦没した船と海員の資料館
2007年9月6日訪問
港町神戸のなかでも港のすぐそば、海岸通りに面して全日本海員組合関西地方支部のビルが建っている。
その中にあるのが、戦没した船と海員の資料館である。
西太平洋を覆う長大な戦線を形成した太平洋戦争において、多くの民間船が徴用され、兵員や物資を運んで戦争に協力させられた。
当然敵国の攻撃の対象になり、7000隻以上の船、6万人の船員が犠牲になっている。
この資料館にはそれらの船の模型や写真と各種データが展示されている。
ともすればノスタルジーに傾斜しそうなのだが、そうはならない。
とりまく回廊には今も海底に眠る沈没船の写真が並ぶ。
沈んだままの遺骨の写真もある。
パンフレットの趣意に見える無謀な戦争というとらえ方や、「あの戦争は何のためのものだったか、
そういった反省をこめて平和について考える場所」という記述、また展示されている「商船乗りは
日章旗のもとでは死するとも 軍艦旗のもとでは死なじ」という叫びからしても、戦争の美化にはつながらない。
さらに戦没船員のうち3割が20歳未満の青少年だった事実、30歳未満とすると約6割にも及ぶという事実が展示されている。
中にはわずか14〜15歳で犠牲になった船員もあり、その数が4千名近くになるのだ。
この資料館は、戦没船を克明に記録するとともに、「再び海を戦場にしてはならない」という海で働く人たちの決意の表明でもある。
この資料館は、船員という固有の立場から戦争を振り返り、平和の大切さを訴える平和ミュージアムであるといえる。